英文会計実務の基礎知識
英文会計中級コース概要 | リエゾンインターナショナル株式会社
1. 外貨建て取引と為替差損益
国際展開・海外進出の際に必ず登場する海外売上や海外仕入。それらは、円建て取引のこともあれば外貨建て取引のこともあります。帳簿上、外貨での取引は、外貨建て取引額と、一定の為替レートを用いて計算される円換算額の両方を記録することになります。
売掛金や買掛金も、外貨建てでの金額と円換算額が同時に記帳されますが、売上や仕入時と、売掛回収や買掛支払までには、時の経過があるので、円換算に用いる為替レートが変化します。そこで、売上時と売掛回収時、仕入時と買掛支払時の為替レートの変動から生じる差異を(実現)為替差益 または(実現)為替差損 として計上します。
ここでは、外貨建て売上や外貨建て仕入の円換算額での記帳方法、売掛回収時や買掛支払時の(実現)為替差損益の計上方法を、数例とりあげて説明します。
1-1. 商品売上時の仕訳 | 外貨建て収益と為替差損益
日本国内の在庫 3,500,000円を国外へ輸出し、海外売上 USドル建て $50,000 売上計上時の為替レートは JPY98.00/USD 代金回収は40日後
販売時の仕訳 |
Dr.(借方)科目 |
Dr.(借方)金額 |
Cr.(貸方)科目 |
Cr.(貸方)金額 |
日本語 |
売掛金 |
4,900,000 |
売上(国外) |
4,900,000 |
英語 |
Accounts receivable-trade |
4,900,000 |
Sales-overseas |
4,900,000 |
Cost of goods sold |
3,500,000 |
Inventories |
3,500,000 |
USD50,000×98.00=4,900,000(売上高の円換算額)
売上高は国内売上なのか国外(海外)売上なのかがわかるよう区別して仕訳するのが通例です。勘定科目には「海外売上」「国外売上」等が使われます
日本語の仕訳は日本企業でよく使われている「仕入」勘定、英語の仕訳は海外でよく使われている”Inventory”勘定を、商品仕入時に使っている前提での仕訳例です
1-2. 売掛回収時の仕訳 | 外貨建て収益と為替差損益
40日後、上記 1-1 で売り上げた US$50,000 を回収、全額が銀行口座に入金された。回収時の為替レートは JPY100.00/USD
回収時の仕訳 |
Dr.(借方)科目 |
Dr.(借方)金額 |
Cr.(貸方)科目 |
Cr.(貸方)金額 |
日本語 |
預金 |
5,000,000 |
売掛金 |
4,900,000 |
|
|
為替差益 |
100,000 |
英語 |
Bank |
5,000,000 |
Accounts receivable-trade |
4,900,000 |
|
|
Foreign exchange gain-realized |
100,000 |
USD50,000×100.00=5,000,000(売掛回収額の円換算額)
売上時に計上した売掛金の全額を貸方に移して消し、回収時の為替レートで計算した円換算額を借方(預金)に記入。貸借の差額が為替差損益になります
1-3. 商品仕入時の仕訳 | 外貨建て費用と為替差損益
海外の仕入先から商品 EUR30,000 を輸入した。仕入時の為替レートは JPY132.00/EUR 代金支払いは40日後
仕入時の仕訳 |
Dr.(借方)科目 |
Dr.(借方)金額 |
Cr.(貸方)科目 |
Cr.(貸方)金額 |
日本語 |
仕入(国外) |
3,690,000 |
買掛金 |
3,690,000 |
英語 |
Inventories |
3,690,000 |
Accounts payable-trade |
3,690,000 |
EUR30,000×123.00=3,690,000(仕入高の円換算額)
仕入高は国内仕入なのか国外(海外)仕入なのかがわかるよう区別して仕訳するのが通例です。勘定科目には「海外仕入」「国外仕入」等が使われます
仕入に係る輸入消費税の経理処理については「国内取引と国外(海外)取引」のページをご覧ください
日本語の仕訳は日本企業でよく使われている「仕入」勘定、英語の仕訳は海外でよく使われている”Inventory”勘定を、商品仕入時に使っている前提での仕訳例です
1-4. 買掛支払時の仕訳 | 外貨建て費用と為替差損益
40日後、上記 1-3 で仕入れた商品代金を 銀行口座から送金して全額支払った。支払時の為替レートは JPY135.00/EUR
支払時の仕訳 |
Dr.(借方)科目 |
Dr.(借方)金額 |
Cr.(貸方)科目 |
Cr.(貸方)金額 |
日本語 |
買掛金 |
3,690,000 |
預金 |
4,050,000 |
為替差損 |
360,000 |
|
|
英語 |
Accounts payable-trade |
3,690,000 |
Bank |
4,050,000 |
Foreign exchange loss-realized |
360,000 |
|
|
EUR30,000×135.00=4,050,000(買掛支払額の円換算額)
買掛支払時も、売掛回収時も、銀行手数料がかかりますが、ここではその仕訳を省いています
1-5. 社内レートと為替差損益 | 外貨建て取引と為替差損益
外貨建て収益と為替差損益、外貨建て費用と為替差損益 では、外貨建て取引を円換算する際、当日の実際レートで換算する前提で解説してきました。
外貨建て取引が頻繁でない場合は、当日の実際レートで換算することは大きな事務負担になりませんし、予算実績管理などの財務管理上もさほど問題になりませんが、外貨建て取引が頻繁になると、取引のつど実際レートを確認し、円換算額を計算するのは、管理がしにくくなり、効率も悪く、記録のミスにもつながります。
そこで、実際レートに代えて、社内レートを決め、このレートによって、外貨建ての収益・費用を円換算する方法がとられています。
社内レートには、前月の実際レート平均を今月の社内レートとするなど、合理的に計算されたレートが使用されます。
実現為替差損益と未実現為替差損益
外貨建て売上や外貨建て仕入の円換算額での記帳方法、売掛回収時や買掛支払時の(実現)為替差損益の計上方法を説明してきました。
外貨建て売掛金や外貨建て買掛金、外貨預金等の外貨建て資産負債は、月末や四半期末、年度末など一定期間末にその時点での為替レートで評価替えします。このとき測定される為替差損益を未実現為替差損益といいます。
月次決算時などに計上される未実現為替差損益については、リエゾンインターナショナル株式会社の「英文会計中級コース」で説明しています。 英文会計中級コース週末夜クラスのご案内はこちら
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